10.1〜1.31
アーティスト・サポート・プログラム
enoco [study?] #3 入選アーティスト決定!

「社会や他者との関わりを通して、アートの可能性を拓(ひら)くこと」をテーマに、若手アーティストの制作活動と展覧会のサポートを行うプログラム、enoco [study?]
3回目となる今年度は、201571日~831日の間に募集を行い、審査員とenocoスタッフによる厳正な審査の結果、湯川洋康+中安恵一を入選者として決定いたしました。
ご応募いただいた皆様には、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
2人組のユニットである湯川洋康さん、中安恵一さんには201510月~12月の3ヶ月間、enocoを拠点とした制作活動を行っていただきます(制作期間中、ワークショップとアトリエ公開を予定)。また1月にはenoco展示室にて展覧会を開催する予定です。

日程などの詳細・プロジェクトの進捗は、随時ホームページやSNSなどでお知らせしていきます。今後の展開にご期待ください。

▼10/1 「習慣」についてのアンケートにご協力ください。
▼10/1 作品制作のサポートスタッフを募集します。

▼10/8 ワークショップ「習慣を交換する」を実施します(10/31)

▼11/5 中間報告会&レビューを実施します(11/29)

アーティスト・サポート事業 enoco [study] #3 審査結果

入選アーティスト:湯川洋康・中安恵一(ゆかわひろやす・なかやすけいいち)

プラン内容

テーマ:
習慣、阻害、彫刻

企画内容:
そもそも、だいたいにおいて我々人間は習慣に対して無頓着で無自覚である。けれどもそれは、永く社会との関係性の中で続いてきた営為であり、あるいは社会を成立させている正体かもしれない。ごくごく注意すれば、私たちは、生活の中で、あるいは 旅先で、あるいは歴史の中で、見慣れぬ習慣を持つ人や、彼らが残した物に容易に出会う。私たちは、社会とのやりとりを通して、そこに潜在しているものに触れることが、 一つ制作の大きな動機になる。

身の回りの習慣を「習慣」として表面化するのは、習慣を阻害するものと対峙したときである。いつもの習慣が何らかの原因によって不自由となったときにこそ、その行為が自らのごくごく滑らかな身体的実践として浮彫になる。

私たちは、現在の習慣にほつれや違和感を生み出す一つの引き金として、また我々の習慣を振り返らざるを得ない状況を作るために、過去から現在にわたるメディウム・コンテクストの断片を拾い集めた彫刻を作る。彫刻化という作業を通して、その断片が交錯して成る平衡状態を提示する。私たちは、その彫刻を、関係性を張り巡らすパーツのように配置し、人類の営為、その過去/現在の編み込まれたほつれの空間として構築する。

制作にあたっては、大阪に暮らす人々との対話やインタビューなどによって、彼らの習慣とそれをめぐる潜在性について深くリサーチを行う。それによって浮かび上がった文脈や素材、物質などを、次は自らの手で収集し、時には置換をして、彫刻を構成 するものにしていく。

アーティストプロフィール

湯川洋康・中安恵一(ゆかわひろやす・なかやすけいいち)

http://yukawanakayasu.net/

<略歴>

アーティスト。ともに1981年度兵庫生まれ、2012 年結成。大阪を拠点に活動。習慣・歴史・習俗をはじめとした過去から現在にわたる人間の営為とその痕跡と向き合い、そのメディウムやコンテクストを通じて多様な関係性を彫刻化する作品を制作。彫 刻化した作品を対象の平衡状態と見なし、その平衡を空間に配置する。鑑賞者が私たちの示す平衡と対峙するプロセスを通して現代社会に介入し、多様な次元を持つ関係性を構築する。

主な展示プロフィール画像
2015 
「羽根を休めるハビトゥス」中之条アートビエンナーレ 2015, 群馬
2015  「漂い、刻まれ、漂う偶然」, Galeria 大正蔵 , 淀江(鳥取藝住祭)
2015  「豊饒史のための考察」第18回岡本太郎現代芸術賞展 , 岡本太郎美術館 , 川崎
2014  「船は港に寄せられて 港は船に選ばれる便りは届く, Kapo gallery, 金沢
2014  「縣神社美術館プロジェクト」, 縣神社 , 宇治

アーティスト・イン・レジデンス
2014  CAAK & Kapo Creator in Residence 11, 金沢

出版
2014  出版社「流通文社」設立
2014  『理念学』,『依』第 1
2014  『船は港に寄せられて 港は船に選ばれる 金沢』

受賞歴
2015  18回 岡本太郎 現代芸術賞 入選

※参考作品

taro
《豊饒史のための考察》より (2015)
テーマと文脈・意匠:「祈りと豊饒」背守り / 百度参り / 千羽鶴
素材: / / / / / / 和紙 / 芯棒 / 天秤 / 羽根 / ビーズ / 木の実 / 五円硬貨 / 装身具
(写真提供:川崎市岡本太郎美術館)

yodoe
《漂い、刻まれ、漂う偶然》より (2015)
テーマと文脈・意匠:「偶然」サエノカミ信仰 / 竹取物語 / 女神 Juno の伝説
素材:羽根 / / 卵の殻 / 太鼓 / / コイン / / アスファルト / 子安貝 /

制作・展示プロセス

スクリーンショット 2015-09-17 17.02.22①習慣の調査と収集
・ワークショップによってこれを行う
・テーマは「習慣を阻害するものを見つける」
・習慣について予め習慣調査票のようなものを用意し、参加者に回答してもらう
(e.g. 縁起を担いでいる習慣は?、家庭内で世代を超えて行っている習慣は?)

 

②収集した習慣の考察
・対象化した習慣とその阻害の考察
・歴史性や社会性の観点からリサーチする (法律・教育・経済など)
・専門家(学者)へのインタビューも適宜行う
・習慣と阻害をめぐる多様な関係性を整理し、意匠や素材、文脈、関係性などを抽出する

③彫刻化
2で抽出したものを、メディウム・支持体・意匠として用い、彫刻を作り上げる
・彫刻は複数制作する。それぞれは単体としての彫刻であり、またその彫刻群の関係性によって一つの空間となる

今後のスケジュール(予定)

ワークショップ(10月~11月)
一般向けのヒアリングと、「習慣の阻害」をモチーフにしたワークショップを行います。

中間レビュー:11月中旬~下旬
リサーチの成果や制作の進捗、展覧会の構想について、アーティストが発表します。

展覧会:201619日~130
3ヶ月にわたる活動の成果を展覧会として発表します。

スケジュールは変更となる場合があります。詳細はウェブサイトにてご確認ください。

審査について

40歳以下の若手アーティストを対象に公募を行い、提出頂いた作品プラン、ポートフォリオなどをもとに、「美術作品・プロジェクトとしてのオリジナリティがあるか」「社会や他者と関わることへの積極的な姿勢があるか」「プランの計画性・実現可能生は十分か」「enocoという場(施設)の特性を考慮した提案がされているか」「今後の創作活動につながる将来性・発展性があるか」という5項目の審査基準に基づき、100点満点の得点制で審査を実施しました。

各作品に関するディスカッションを行った後、各自審査基準に基づき点数にて評価を行い、その合算で得点数の多かったアーティストを絞り、本事業で取り組む意義があるか/本事業趣旨に合致しているかを議論し、入選者1名を決定しました。

選評

平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員/つくるビルアドバイザー)

今回の応募プランには、他者とのコミュニケーションプロセスによる視覚化、作品化、地域や社会的な問題をテーマとするプランが多くありました。しかし、参加者頼みで「作品」が見えないプランが多いのも事実でした。

湯川洋康+中安恵一のプランは「習慣、阻害、彫刻」というテーマのもと、地域で習慣を阻害するものを調査、収集し、そのリサーチから得たものを彫刻化するというプロセスのオリジナリティ、社会や他者と関わる姿勢を評価しました。

近年の美術界では収集・アーカイブや民俗学的アプローチは新しいわけではありません。しかし、湯川+中安は手法や地域への介入、関係性に対して批判・反省点を自覚している点で異なりました。

アランは習慣とは「考えずに行動するすべ、しかも考えてやるよりもっとうまく行動するすべ」(『定義集』)だと書きましたが、無自覚な行為である「習慣」を考えるというこれ以上の「study」はないでしょう。地域の「習慣」を収集し、そこからどのような彫刻が生まれるのか。このプロセスにenocoや地域住民がどう関わるのか。作家の一方的な関係性ではなく、地域と平衡で豊饒な関係を構築するにはどうすればいいのか、それは湯川+中安だけでなく、今の美術界が抱えている課題のようにも思うのです。

宮本典子(アートマネジメント・コンサルティング office N 代表/ART OSAKA事務局)

今回、選出のポイントは、制作プランをどれだけ説得力をもって第三者に伝え、興味や共感を喚起できたかだと思います。もちろん、作品ポートフォリオや成果発表の展覧会イメージ図も、一定レベル以上に必要です。今回の応募案の多くが、相手に伝わりにくい内容に留まっていたのが残念でした。

 そんな中選出された、湯川・中安さんユニットは、文化人類学的な視点をもちながら、ある社会の習慣を阻害を通じて顕在化させることをテーマに、立体作品を制作されています。提出された制作プランでは、これまでの作品を客観視した上で、インタビュー等の新しい制作手法=「対人的な行為を通すこと」の必要性を明確に述べ、ポートフォリオからも彼らの今後の展開において必然的なものと感じられ、選出に至りました。

 特に、私が彼らの制作プランで惹かれたのは「阻害」という言葉です。高度に情報化が進み、世界の出来事を瞬時に検索できる同時代において、敢えて不自由な力を加えた状況下で、向き合える世界や開かれる感覚もあるでしょう。 湯川・中安さんのenoco[study?] #3 のプロジェクトを通じて何を発見できるか、楽しみにしています。

総評

峯恵子(江之子島文化芸術創造センター企画部門)

 現代美術の分野において、自分以外の他者の経験や考え方、視点を作品の一部として取り込みながら制作を行うという手法は、近年ますますポピュラーなものになってきています。その傾向を反映してか、今回の公募においても、社会学的なリサーチやインタビューを丁寧に行い、絵画、インスタレーション、映像作品からパフォーマンスまで、それぞれのアーティストがさまざまな方法でアウトプットを試みており、[study?]のテーマである「社会や他者と関わりながら作品をつくる」ということにおいては、第1回、第2回とは比べ物にならないほど各アーティストの理解が進んでいたように思います。また今回はユニットでの応募が非常に多かったことも特徴のひとつで、ディスカッションを繰り返しながら行われるという湯川・中安の制作においても、ある意味では常に「他者」同士のやり取りの中で作品がつくられるという点で[study?]の特性との共通性が見えたことも面白いです。
これから約4ヶ月間、enocoでの湯川・中安の取り組みにぜひご期待いただければと思います。

enoco[study?]#3公募概要

<募集期間>
201571日(水)–831日(月)

<募集人数>
1名(1グループ)

<応募条件>
20158月末日時点で40歳以下であること
・経歴・国籍不問
・日本語でのコミュニケーションがとれること

<サポート内容>
・制作用アトリエの無償貸与(ルーム11 35.3㎡を予定/10:00–21:00 月曜休館)
・制作補助費10万円の支給
・広報サポート(WEBサイト等での広報、プレスリリース発行、チラシ作成など)
enocoスタッフによる制作・展覧会企画実施サポート
・ゲスト審査員によるレビュー・アドバイス

<入選アーティストに課せられる要件>
201510月から12月にかけて、展覧会のための新作を制作すること
201519日から30日の間、enocoにて展覧会を開催すること
・制作期間中にワークショップを実施すること
enoco館内のアトリエを使用する場合は、制作期間中に複数回アトリエ公開を行うこと
・展覧会プランについて中間発表を行うこと(11月下旬を予定)

・展覧会終了後にプログラムのレポートを提出すること(WEBサイトにて公開予定)

enocostudy?#1,#2のレポートについてはこちら

http://www.enokojima-art.jp/enoco_study/

審査員

平田剛志|TAKESHI HIRATA
京都国立近代美術館研究補佐員、つくるビルアドバイザー
1979年東京生まれ。2004年多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。2014年立命館大学大学院先端総合学術研究科修了。専門は近現代美術史、視覚文化論、吉田初三郎の鳥瞰図。アートウェブマガジン「カロンズネット」の編集・ライターを経て2012年より現職。関西を拠点に、美術批評、キュレーションなど幅広く活動を行なっている。

宮本典子|NORIKO MIYAMOTO
アートマネジメント・コンサルティング office N 代表、ART OSAKA 事務局 担当
1980年茨城県生まれ。2007年ヘルシンキ工科大学建築学部IAP修了。大阪の現代美術ギャラリーで6年間勤務した後、2013年よりアートマネジメント・コンサルティング office N を設立する。現代美術の展覧会やイベントのコーディネートの他、企業と共に現代アートを活かしたCSRプログラムの開発、大学で学んだ建築意匠設計の技術を活かし、建築空間への現代アート作品のコーディネート業務を行う。

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