12.15〜3.31

アーティスト・サポート・プログラム enoco [study?] #5 入選アーティスト決定

「社会や他者との関わりを通して、アートの可能性を拓(ひら)くこと」をテーマに、
若手アーティストの制作活動と展覧会のサポートを行うプログラム、enoco [study?] 。
第5回目となる今年度は、2017年10月16日~11月30日の間に募集を行い、審査員とenocoスタッフによる厳正な審査の結果、
前川紘士 氏を入選者として決定いたしました。

ご応募いただいた皆様には、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
前川さんには2017年12月~2017年3月の4ヶ月間、enocoを拠点とした制作活動を行っていただきます(制作期間中、アトリエ公開ほかを予定)。
また2017年3月には制作成果を発表する予定です。
日程などの詳細・プロジェクトの進捗は、随時ホームページやSNSなどでお知らせしていきます。今後の展開にご期待ください。

アーティスト・サポート事業 enoco [study?] #5 審査結果について

[入選アーティスト]
前川 紘士 Koji MAEKAWA

[プラン内容について]
過去10年間の中で、複数の社会的な領域に関わり行なったプロジェクトを、その資料の並置と今回追加されるリサーチを通し、新たな形で更新する為の機会を作る。過去のある限定された時間や空間、文脈の中で行われたプロジェクトを、それらの場所とは異なる環境である現在の江之子島の環境において拡張し、更新する試み。
最初に対象として扱う過去のプロジェクトは、主にこれまでに関わった病院や福祉施設、再開発の進む地域で行なったプロジェクトの他に、大阪で現在も関わるプロジェクトや、今年から関わり始めた非常勤として働く福祉施設での活動も含む(要調整)。

過去のプロジェクトの資料から導き出される要素を元に、現在の江之子島を中心として類似する要素を持った場所へのリサーチを行う(例えば、「場所」に注目し、江之子島近くの病院や福祉施設、再開発地域に関するリサーチを行いその資料を収集する)。
ある目的・文脈があって進んでいくプロジェクトに対して、他の時間・場所から関わることで、どの様な可能性を見いだすことができるか?また個人が複数のプロジェクト・文脈間を行き来すること自体について改めて、考え、制作や活動と結びつける機会としたい。

enocoのアトリエスペースでの滞在期間中は、病院や福祉施設、再開発の進む地域で行なったものなど複数の過去プロジェクトに関する資料、enokoで新たに更新するリサーチに関する資料を公開する。ワークショップも含めたリサーチと過去の資料群から、過去の限定された空間に規定さたプロジェクトを現在の異なる場所としての大阪と結び付ける機会を探る。

[制作プロセス]
・12月:過去資料の搬入、配置。各資料の整理と江之子島での情報収集からリサーチの鍵となる要素をいくつか上げる。アトリエを資料室とし段階的に公開。また、過去プロジェクトへの再リサーチも開始。
・1月:12月のリサーチの続き。江之子島のアトリエの資料室に複数の場所の要素が重なる状況を作る。いくつかの資料の重なりから今回動かせそうな内容を見定める。
・2月:1月までの制作・リサーチの進行を受けて、それらを更新。
・3月:3月中旬から、その時点での成果をギャラリーにて公開(プロジェクトの進行次第で内容・形式は変更する)。

今後のスケジュール(予定)

○中間レビュー:2018年2月(予定)
リサーチの成果や制作の進捗、成果発表の構想について、アーティストが発表します。

○成果発表:2018年3月下旬(予定)
4ヶ月にわたる活動の成果発表を実施します。
※スケジュールは変更となる場合があります。詳細はウェブサイトにてご確認ください。

作家プロフィール

略歴

1980 大阪府生まれ
2004 京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業
2007 京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了

経歴はこちら

 

過去作品

 

 

 

 

『ひと花センター美術の時間』2013年〜現在、[西成区単身高齢生活保護受給者の社会的つながりづくり事業ひと花センター]ひと花センター、大阪

 

 

 

 

『Hands projection_models of scale connecter』2015年、Gallery PARC、京都

 

 

 

 
“D50″の時間 「奈良県障害者芸術祭HAPPYAPOTNARA 2011-2012 アートリンクプロジェクト」における那須大輔との恊働制作、2011-12年、奈良県文化会館、奈良

審査について

40歳以下の若手アーティストを対象に公募を行い、提出頂いた作品プラン、ポートフォリオなどをもとに、「美術作品・プロジェクトとしてのオリジナリティがあるか」「社会や他者と関わることへの積極的な姿勢があるか」「プランの計画性・実現可能生は十分か」「enocoという場(施設)の特性を考慮した提案がされているか」「今後の創作活動につながる将来性・発展性があるか」という5項目の審査基準に基づき、100点満点の得点制で審査を実施しました。
各作品に関するディスカッションを行った後、各自審査基準に基づき点数にて評価を行い、その合算で得点数の多かったアーティストを絞り、本事業で取り組む意義があるか、本事業趣旨に合致しているかを議論し、入選者1名を決定しました。

<選評>
奥村 一郎(和歌山県立近代美術館 学芸員)
前回よりも各応募者のレベルは高く、今回の審査も私たちを大いに悩ませました。実に完成したプランもありましたが、苦渋の選択の結果、プランの場所性や作家の実力などから判断して、enocoでなくとも実現可能性の高いプランについては外させていただきました。
選ばれた前川紘士さんは、これまでも病院や福祉施設、再開発地域といった場所でのプロジェクトに携わり、関わるひとたちとの関係性のなかから、世界のあり方を探ることを試みてきましたが、応募されたプランでは、過去10年間に渡る自身のプロジェクトの資料をまずenocoに持ち込んで来館者に公開し、再びリサーチし直すことから始め、enocoという異なる環境において「拡張」し、「更新」することが提案されていました。この試みには「ある目的があって進んでいくプロジェクトに対して、他の時間・場所から関わることでどのような可能性を見いだすことができるか?」という問いと、「複数のプロジェクト・文脈を行き来すること自体について改めて考え、制作に結びつける機会としたい」という前川さんのヴィジョンがありました。プロジェクトに対するこうした前川さんの視点は非常に独特なもので、enoco[study?]という実験的なプログラムに相応しく、その可能性が高く評価されました。
enoco[study?]は、今年度から成果発表がギャラリーでの展覧会形式に限定されず、場所や形態が自由になりましたが、前川さんのプランは、このリニューアルの期待にも応えるものとなりそうです。enocoとの対話・協働のなかからどのようなかたちが生まれるのか、楽しみに待ちたいと思います。

小林 瑠音(文化政策研究者(神戸大学大学院博士後期課程在籍、日本学術振興会特別研究員))
前川紘士さんのプロポーザルに提示されていた、過去10年間に渡る活動歴からは、作家としてのユニークな立ち位置と同時代的なネットワークが垣間見えました。それは、生活保護受給者や障害者との協働制作であったり、様々なディシプリンをもつ若手芸術家とのコレクティブな活動であったりと、異なる文脈を行き来するバランス感覚を彷彿とさせるものでした。
そして何より、選出の決め手となったのは、それら過去の蓄積を俯瞰し、「拡張・更新」させるリサーチ自体を今回の計画の主軸に据えているということでした。新しい作品や出来事をつくりだすだけではなく、あえて過去の資料をすべて持ち込み、練り直す行為を重視する姿勢には、他の応募者のプランにはない意表を突いた斬新さがありました。enocoにとっても、単発のプロジェクトをこなすだけでなく、一人の作家が小休止してブレイン・ストーミングを行う過程を支援するという意味で、アーティストとの新たな協働の在り方を模索する機会になるのではないでしょうか。
とはいえ、3ヶ月という短い期間でそのリサーチの成果をどうみせるのか、非常に挑戦的なプロジェクトになると思います。これまで既に社会や他者との関わりを数多く重ねてきたアーティストが、enocoでの経験を通してどう変化するのか、前川さんには新たな境地の発見とその提示を期待しています。

<総評>
吉原和音(江之子島文化芸術創造センター 企画部門)
今年で5回目となるアーティスト・サポート事業enoco[study?] ですが、今回から募集要項の一部をリニューアルしました。1点目は制作補助費を20万円へと増額、2点目は成果発表の場所や形態を自由な形式とすることとしました。それにより、例年よりさらに[study?]のテーマである「社会や他者と関わりながら作品をつくる」ことと、制作プロセスや最終のアウトプットへの落とし込みについて作家自身の仕事との連続性を感じさせるプランが多かったように思います。またenocoという場から地域、そして都市といったような視点の広がりを持つものも多く見られました。
今回入選した前川紘士さんは、これまで様々な領域や環境で、他者との関わり合いの中で企画を立ち上げ、実践するといった活動をされてきています。今回のプランは、それらにまつわる資料を整理・再編集しながら、enocoという新たな軸とも加えつつ、自身の過去・現在の仕事を社会にひらきながら拡張し更新していくというものです。様々な環境で遂行されるプロジェクトの現場がある中で、作家だけでなくそれに関わる多様な人々が、そのプロセスの中で抱く課題や思いを再考する機会となるのではないかと思わせるものでした。
本プログラムは、約3ヶ月という長くもなく、短くもない期間であるからこそできる実験と実践の場でもあります。これから3月までの間に、作家の持つ文脈とenocoの持つ文脈、また他者の文脈をリンクさせることにより、どのような形にアウトプットできるかはまだ未知数ですが、共にstudyしながら取り組んでいくことができればと思います。ぜひご期待ください。

公募概要

募集期間
2017年10月16日~11月30日

募集人数
1名(1グループ)

応募条件
・2017年11月末日時点で40歳以下であること
・経歴・国籍は問いませんが、日本語でのコミュニケーションがとれること

サポート内容
・制作用アトリエの無償貸与(ルーム11 約35.3㎡を予定/10:00–21:00 月曜休館)
・制作補助費20万円の支給
・広報サポート(WEBサイト等での広報、プレスリリース発行、チラシ作成など)
・enocoスタッフによる制作・展覧会企画実施サポート
・ゲスト審査員によるレビュー・アドバイス

入選アーティストに課せられる要件
・2017年12月から2018年3月にかけて発表に向けて新作を制作すること
・2018年3月以降に応募プランに基づいた制作の成果を発表すること *
・制作期間中に参加型のプログラム(ワークショップ等)を1回以上実施すること
・enoco館内のアトリエを使用する場合、制作期間中にアトリエ公開を行うこと
・展覧会プランについて中間発表を行うこと(1月下旬〜2月初旬を予定)
・展覧会終了後にプログラムのレポートを提出すること(WEBサイトにて公開予定)
*応募プラン・成果発表に関する詳細は公募要項をご覧ください。

enoco[study?]過去のレポートについてはこちら

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