版画技法


版画には、その版の形式によって凸版、凹版、平版、孔版、拓版などに分類される。



(1)凸版

凸版の図 画線部となる部分を残し、 他を削り取る手法により、残された部分にインクが付着して印刷される。木版画に代表される。



木版 木の板に線や形を彫って製版し、印刷したもの。浮世絵に見られるように、日本では伝統的に用いられてきた技法であり、 その技術は世界的に優れている。

リノカット 版の材料として床敷材であるリノリウムを用いるが、手法は木版と同じ。木版の場合よりも大きい版が安価に入手でき、 彫る場合に抵抗感が少ないことから、一般的によく多用されている。細かく繊細な表現には不向きだが、独特の彫り味を活かすことができる。 また油性絵具との相性が良く、色が鮮やかにでることが特徴。

前田氏は、平塚運一による著作『版画の技法』(1927年)などを参考に、兵役中に時間を見つけては版画を独習。以来リノカットを多用し、多くの作品を残しています。



(2)凹版

凹版の図 画線部となる部分を彫り込むなどして、凹部にインキをつめ、紙をプレスして凹部のインキを刷り取る方法。



エングレーヴィング ビュランという刃先の鋭い彫刻刀で、直接に版を彫りつけ、その溝にインキをつめてプレス機で印刷する。鋭く、 くっきりとした明快な線が表現できる。

エッチング 防触剤で覆った銅版や亜鉛版に、鉄の針などで線を刻んで傷をつける。その線の部分だけを酸で腐食させ凹部を作り、 その部分にインキをつめて印刷する。腐食させる時間の長短によって、線の強弱や太さの違いを表現することができる。


(3) 平版

平版の図 脂肪と水との反発性などの化学作用を利用して版を加工し、描いた部分のみに油性インクがのるようにして刷りあげる。リトグラフが代表的。



リトグラフ 石板や亜鉛板に脂肪性のクレヨンや解き墨で直接に絵を描いた後、絵の部分が油性のものを引きつけ、 その他の部分が親水性を持つように化学処理を施す。この版に油性インキをのせると、油と水の反発作用によって、絵を描いた部分にだけインキが付着する。 この原版に紙をのせ、プレス機で圧力を加えることによって、絵が描かれた部分だけが刷られる仕組みである。版を彫ったりする必要がなく、 手で自由に描いたそのままが版画となり、細かい表現も可能な点が特徴である。また写真製版も行うことができる。


(4) 孔版

孔版の図 版に孔を開け、そこからインキを通して刷りとるものと、絹のような細かい孔の開いたものを形にあわせてふさぎ、孔から出てくるインキだけを刷りとるものがある。



シルクスクリーン 金属や木の枠に絹やナイロン、テトロンなどの幕(スクリーン)を張り、その幕の網目を様々な方法でふさぎ、 ふさがれていない部分だけからインキを押し出して印刷する方法。 網目をふさぐ方法には、 色を付けたい部分だけを切り取った厚紙の上にスクリーンを重ねて刷る方法や、スクリーンに直接に感光乳剤を塗り、 ポジフィルムを密着させて露光することによって画像を抜く方法などがある。 曲面や立体、あるいは様々な材質にも印刷可能である。



(5) 拓版(フロッタージュ)

フロッタージュという。凹凸のあるものに紙をあて、上から鉛筆、コンテ、油墨などでこすって紙に写し取る方法。

前田氏は木目や身近にある様々な素材に紙を押し当てて、その質感をうつしとることで、作品に豊かな表情を生み出しました。





コラージュ

フランス語で「貼りつけ」の意。キュビズム時代のパブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラックが、 油彩画に新聞や楽譜などを貼りつけたことから始まる。異質なものを画面の中に持ち込むことで、 作品の画面上での整合性を崩し、統一的な意味を失わせることなどをねらった技法。

前田氏は版画作品上に雑誌からの切り抜きなどを貼り付け、画面の中に違和感を持ちこむことで、独自の表現を追究しました。








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