ギャラリー2
フロータージュ(拓版)

b.身近な素材の発見


a.木目の発見

木目をそのまま使った画面は、前田氏の作品の特徴としてあげられます。そこには、版を彫ることに縛られない、前田氏の自由な想像力を見るようです。

作品、顔のサムネイル
顔
<顔>1957年、木版、リノカット、フロッタージュ、ステンシル、紙、42.5×54.0cm

作品、屈折の倫理のサムネイル
屈折の倫理
<屈折の倫理>1978年、木版、リノカット、フロッタージュ、紙、42.0×54.0cm


高橋: 木目をフロッタージュ※などで使われるのが、前田先生の版画の特色の一つとなっているようですが、 特に木目に興味をお感じになるのは、どういう点ですか。
前田: それは前から昭和五年か六年頃に、エルンストなどのエッチング、銅版画に興味をひかれて、銅版画の線の運び方が、 木目に共通するみたいなものだといったぐらいのところから入り始めました。油絵でもかけないことないのですが、 そういうことではなしに、いわゆるフロッタージュならフロッタージュ。一銭銅貨の上に、薄い紙を置いて鉛筆でこすれば写りますからね。 そういう所からずっと入って木目になってしまったんですよ。木目を木の目としてではなく、ということです。面白いものですよ。 木目を見てましたら、山にも見えたり、海にも見えたり、あるいは荒れた土地に見えたり、ちょっとはさみ入れただけで、人間様になったり、 いろいろしますよ。





b.身近な素材の発見

彫るという意味での版画にこだわらない前田氏は、木目のみならずあらゆる身近な素材を組み合わせ、その凹凸を写し取りました。 例えば壁紙やサンドペーパー、あげくに厚紙を思う形に切りとって、 重ねて貼ることでできる段差さえも利用しました。リノカットを使うことによって油絵具の発色もよく、この鮮やかな色彩と技法の持つ特徴の組み合わせで、 大いに制作の可能性が広がったことでしょう。特別な道具を用いるまでもなく、前田氏は想像力でもって、 身近な素材をから豊かな表現を生み出したのです。

作品、スカタンのサムネイル
スカタン
<スカタン>1983年、リノカット、フロッタージュ、紙、44.0×35.0cm
作品、イビサにてのサムネイル
イビサにて
<イビザにて>1976年、リノカット、フロッタージュ、紙、42.5×54.3cm
作品、デートのサムネイル
デート
<デート>1976年、リノカット、フロッタージュ、紙、42.5×54.0cm


前田: 私の場合、この時分、人間を表す場合に、男は丸と四角、女は丸と三角と、それで、足だけはある。 手はあったりなかったりするんです。まあ、そういうふうな式で表現しています。足は要らんと言われてますけど、 あしなかったら動きがどうも取れませんのでね。右から女性がやってくる、左から男性がやってくる。まあ、デートですなあ。 デートの途中ですわ。両側にあったんですが、真ん中になると、もういややわあ、とお尻どうしが合ってると、デートはうまくいかなんだと、 まあ、そんなところです。
高橋: ちょっと見えにくいかも知れませんけど、男は四角、女は三角なんですね。
前田: 男は寒色系統で、女は暖色系統で仕上げています。
高橋: こういう最近の作品をみますと大変ユーモラスで、それから風刺的なものもありますが、 たいへん、楽しんで作品を作っておられるような感じがするんですが・・・・・。
前田: ええ、もう年が年ですから、なるべく苦労せずに自分のやりたいものをやりたい。売れる売れんとか、 認められるられないとかは別にして、好きなことをやる以外、手がないという年齢にきましたので。



a.木目の発見


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